アガベ属(Agave)の耐寒性と厳しい日本の環境の越冬、冷害について。多くがメキシコ原産のアガベですが日本の夏、冬はアガベにとって厳しい場合が多く、耐寒性や越冬、冷害についての記事です。
日本の気候とメキシコの気候について
日本の東京都とメキシコのオアハカ州の気温や降雨量について
日本と同じ北半球なので季節は同じ。ターゲットは標高の高くチタノータやポタトルム(雷神)の原産地と言われているメキシコ・オアハカ州(Oaxaca Mexico)と東京都を比較してみます。
東京は北緯36度、オアハカは北緯17度。なお沖縄は北緯26度となっているので沖縄よりも赤道に近い。上の地図は12月の平均温度を表したものだがオアハカ州は15度〜20度のゾーンにいる。
平均気温について
同じ冬の比較で東京は12月平均が8.3度、メキシコ・オアハカ州デフアレスは12月平均が17.9度となっている(気象庁のデータより)
東京都の気温 (weatherspark.comより)
オアハカは年間を通じて最高気温は25度前後、真夏で31度程度、最低気温は10度〜15度に収まっている。年間で一番低い平均最低気温は9度の1月。このことからオアハカ州と比較すると日本は夏は猛烈に暑く冬は寒いという過酷な環境と言える。
平均気温が最低の9度となる1月でもオアハカ州は非常に安定している。1月は毎日25度まで気温が上がり9度までしか気温が下がらない。寒暖の差も大きい。
東京都に関しては変動(ボラティリティ)が大きくまた日中の気温が上がらない状態だ。年間を通じて見ても日中の気温差が少ないというのも特徴だろうか。
降雨量について
降雨量に関しては東京は年間を通じて雨が降り秋と春の梅雨の時期に多めに降る。オアハカ州は日本の梅雨と同じタイミングに降雨量は東京と同等程度、冬の間は殆ど降らない。春〜秋の日照時間は東京のほうが有るようだ。
湿度(人間の過ごしやすさ=植物の過ごしやすさ?)
何この不快指数の高さは!除湿機か乾燥機かみたいな。
湿度は雨季でも乾燥しており東京の35度を超える真夏のジメジメはなくカラッとした30度程度と人間も非常に過ごしやすそうだ。幸いにも冬は同様の乾燥でさらに降雨量が少ないため気温以外は同じような環境だろう。夏の蒸し暑さはアガベにとっては厳しそうだ。
アガベの年間を通じた育て方、耐寒性への考察
アオノリュウゼツランのように露地植えで全く普通に育つ種類もいるが、主に小型種、日本で多いポタトルム(雷神系)やチタノータを対象に記載。育て方や環境、種類や株のサイズによっても違う点は留意ください。
メキシコも広く地域によって気温差があるが、年間を通じて温かい。冬は5度を下回らないようにしたい。また最高気温がオアハカ州の最低気温9度を下回る場合も取り込むなどの対処をしたほうが良いだろう。冬は断水をしても大丈夫だろう。断水をした方が一般的には耐寒性が増す。
- 最低気温が5度を下回ってきたら取り込み、加温など
- 最高気温が10度を下回ってきたら取り込み、加温など
- 冬は断水でよい、気になるなら表土が濡れる程度の水やりでもよいかもしれない
- (寒暖差を作る工夫、冬はハウスなどがあるとよいかもしれない)
上記を基本とすると枯らしてしまう確率は減らすことができると思う。暑さは耐えるが多少風通しの確保と連日35度を超えるようであれば少し休ませるなどの対処は必要かもしれない。
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アガベの耐寒性について
毎年最低気温が5度を下回ってくると取り込みを行っていたが、今年は暖冬の影響や実生株が多すぎて取り込みしきれないので耐寒性の実験のようになってしまった株があるがいくつか冷害のような症状が出た。
種類や育て方、同じ種類でも株によって耐寒性は異なり一概には言えないので世の中で言われていることを鵜呑みにしすぎないほうがよい。
小さい株は耐寒性が低い可能性がある
2019年1月24日に撮影した、アガベ・パリー(吉祥天・Agave parri)耐寒性が強いと言われていて東京でも露地植えされているのを見たことがある。
同じくアガベ・パリー(Agave parryi var.truncata)の実生3年目の株。寒さで葉が柔らかくシワシワになってしまった株がいくつかある。
大きい株は寒そうにしていないが、小さい株は寒さでダメージが出始めている。
置き場所によっても差が出ることも
東京の場合は、先に定義した最低気温が5度を下回ってきた、最高気温が10度を下回ってきたというケースにギリギリ境目である。もう少し山間部、雪が降る地域に行くと境目ではなくNGゾーンなので取り込んでいるが、ギリギリ境目で育てる場合は、置き場によっても差が出る。
例えば、ベランダで育てている場合、ベランダの手摺側と室内側の場所によっても温度が違う。ベランダの手摺側で屋根はあるが冷気に当たっているだろう。また屋根が無い場所で育てる場合は放射冷却によって明け方はかなり冷気があたり、天気予報などの気温が当てはまらないケースもある。
斑入りの株は若干耐寒性が弱いことも
下葉が大きく枯れ込み、葉自体にもダメージが出ている。大きい中斑のアガベ・ポタトルム。下葉に障害が出てきたので取り込んだがその後に葉に色々と変化がでてしまった。手持ちで一番耐寒性が無い株だろう。一般的には斑入りの株のほうが弱いケースが多い。
アガベの冷害、耐寒性は観察を
アガベは比較的水を切っても生きている。この様に葉がしわしわになってきたら寒さに注意が必要だ。特に下葉の先端からこういった症状が出やすい。
下の葉が若干シワシワになっている。葉の更新の場合も最終的にはしわしわになるのだがまだ枯れそうもないのでギリギリの寒さになっているのだろう。
こちらは明確には症状がでていないが、若干葉にシワが入ってきているのと、夏に比べると葉の色が薄くなってきている。まだ大丈夫だと思うが日中に温度も上がらず、この株にとっては厳しい状況が続いている可能性が高い。
冷害が出た葉は治らない。鑑賞上は悪くなる上に葉が更新するに時間がかかってしまうためできる限り冷害が出ないように管理をしたい。
1日で一気に枯れるということは少なく、1日だけ最低気温が1度になったとしても例えば日中が暖かければ急に枯れない場合もあるが少しずつダメージは蓄積していくとおもうので様子を見て、余裕を持って取り込みなどを行いたい。
また霜に当てたり、東京でも1年に1回か2回雪が積もるがそういった場合は1回で枯れてしまうことがあるので注意が必要。
アガベの越冬、耐寒性のまとめ
- 同じ種類でも株によって耐寒性は変わってくる
- よく観察する
- 株のサイズによって耐寒性は変わる
- 置き場所によって気温や寒さは変わる
- 斑入りの株には注意が必要
できる限り外で直射日光に当てて元気に育てたいが、寒さによって枯らしてしまうことを避けるバランスも必要です。無事に越冬してまたシーズンを迎えましょう。