3Dプリンタで作る植木鉢の価格設定と位置づけについて

3Dプリンタに限らず、植木鉢に限らずですがハンドメイドや自主制作のプロダクトの価格設定は非常に難しい。3Dプリンタで作った植木鉢の価格設定についての考察です。

本記事について

読み物としてのわかりやすさを優先して記載しました。プライシング戦略などの教科書的な話ではございません。価格設定や位置づけを皆様と一緒に追体験できるような内容です。

重要なプライシング

商品開発や事業経営では価格設定(プライシング)が非常に重要です。個人でやるのであれば企業活動に比べると自由度が高いですが、ハンドメイド品を販売したことがある方はわかると思いますが非常に悩ましい。3Dプリンタで作った植木鉢「SSN鉢」の価格設定の際に気にしたことや考えたことをまとめています。

価格設定の考え方

大きく分けると、「既に出来上がっているマーケットを基準とする方法」と「原価から欲しい利益を基準とする方法」がある。

両者のバランスを上手くとることが必要ですが、植木鉢販売のマーケット自体は既に存在しているのですが、3Dプリンタ製の植木鉢というマーケットは明確にはできていない状況でした。ごく一部の方が販売しているのと外国でいくつか販売例がある程度で植木鉢の販売を開始するにあたり位置づけを整理して価格設定をしました。特に「①持続性があり」「②マーケットを作る」を意識しました。

価格設定の考え方「①持続性」

品質が一定水準を超えたプロダクトであれば値段を安くすれば売れます。不正競争防止法などいくつかの法律がありますが例えば「植木鉢としては機能している」ちょっと凝ったデザインの植木鉢を50円に設定すれば多分よく売れます。ただ原価を大きく割って売ることにビジネス上は意味がないですし、結局は持ち出しになるので持続性(継続)がない。

価格設定の考え方「②マーケットを作る」

まだ明確なマーケットがない場合、最初に価格を設定したところに基準が置かれることになる。例えば自分が90mmの鉢を1,000円で販売を何年か続けて流通量が多くなった時、自分以外の誰かが3Dプリンタで作った90mmの植木鉢を販売する場合、品質かブランドが大きく上回らない限りは1,000円が基準価格の参考になると思います。

「持続的に活動を行うためには利益が絶対に必要」「値下げのプライシングで価値を出すのはダサい」「モノが余っている時代に大量生産はダサい」と理想的なことを自分は掲げているのできちんとした単価にすべきと考えています。品質と価格が合わない場合は結果は売れないので品質を上げるか価格を下げるかしかないです。その品質と価格の対象は既存の植木鉢になると思います。

2,000円で利益が1,100円だったとき、1,000円にすると利益が100円になります。1個2,000円と同じ利益を取る場合、1,000円のプロダクトは11個売らないといけない。普通に考えると11倍売るのは難しいので原価を100円抑えて5倍の数を売ればいい状態を作る場合が多い。自分は原価抑えて5倍売りたくないです。間接コストは5倍かかるし、忙しいのに利益は同じ。原価率が高いと在庫リスクも高いです。値下げは消費者はよいかもしれませんが、給料が上がらない要因だと思ってます。(値下げして市場独占して価格決定権を得るとか法律に引っかからないラインでギリギリ攻めるというのもありますけども、そもそも脱線しました!!)

狙うべき利益水準の考え方は人それぞれですが、仮に1個3,000円販売で原価が1,500円だったとき月15万円の利益を得るためには月100個販売する必要があり1日3個製造して売り切るという計算になります。仮に利益が500円だった場合、300個販売する必要があり1日10個製造して売り切る必要があります。小規模プロダクトの場合は利益水準からもある程度プライシングの設定はできるとおもいます。人が生きていけないプライシングは不幸です。

最後に、非常に難しい問題で植物なども手元に増えたものを譲渡するケースにも当てはまりますが、ハンドメイド作品でも趣味でやっていて原価回収できればよい価格設定で販売をすると、その販売実績も基準となる価格に影響します。利益を出すビジネスプレイヤーと趣味で楽しんでいるプレイヤーの目的の違いで生まれるのですが、3Dプリンタで作るプロダクトも植物も似ているところがあると思います。個人的にはそれで良いとは思っています。

植木鉢マーケット

植木鉢はニッチマーケット、市場調査などのレポートは見かけないし、明確なマーケットデータが存在しているわけではなさそう。普段自分は趣味で園芸をやっているので感覚でまとめました。

育苗系の射出系プラ鉢と、作家が作るような高単価の陶器鉢との比較です。ワンオフ系射出プラ鉢、量産系陶器鉢は除きました。

プラ鉢3Dプリンタ鉢陶器鉢
利用者安価に大量???植物と合わせる
価格30〜150円???5,000〜10,000円
自由度
耐久性(寿命)2年
(位で捨てる)
???10年以上
(5年で飽きる?)
耐久性(耐熱)✗(PLA)
重さ
量産
1個作る手間
素材原価(対プラ)✗?✗?
塗装はできるが基本は黒白中心のアースカラー塗装はできる。素材が選べる。サイズ展開などが容易釉薬や焼き方の表現の幅が広い。塗装もできる

ある程度の項目を並べるとわかりやすいと思います。元々安価な大量生産は向かない製造方法なので必然的に陶器鉢がターゲットになると思います。自由度に関してはそれぞれ制約があると思います。3Dプリンターは大体陶器鉢で作れる「形」は作れます。塗装や表面加工をすると同じ様なテイストにもできると思います。

3Dプリンターの植木鉢と陶器鉢は原価も手間も大きく変わらない状況で、価格に影響する部分は耐久性でしょうか。プラ鉢同等とするならば1年〜数年の製品寿命になると思います。みなさんが同じ陶器鉢を何年利用しているのかわからないですが仮に5年とするならば2.5年程度の寿命だと半値というロジックがわかりやすい。

なお3Dプリンタの植木鉢においては、対紫外線塗料を塗布すると寿命が伸びます。まだまだ素材選択肢が少なく取り扱いが難しいですが、PC(ポリカーボネート)やPA(ナイロン)、またカーボンやガラス繊維などのフィラーが配合されている素材があります。基本的には割れにくいので素材によっては陶器鉢と同じ期待する(割れてしまうや飽きてしまう)寿命は今後同等になる可能性があります。

3Dプリンター製の植木鉢の位置づけ

ということで3Dプリンターで作る植木鉢は、通常のプラ鉢とは違うジャンルで、育苗用のプラ鉢と高級陶器鉢の中間を担う、陶器鉢に近い位置づけとし、価格設定(2,500〜4,000円)を行いました

植物栽培上の特性はプラ鉢で、値段的には大量に並べるのは難しいですが、3Dプリンタ製の植木鉢はデザインや機能性に富んだ新しいカテゴリになってくれたらと思っています。今後も新しい造り手がでてくることで斬新なデザインや特に機能性などの進化は期待したいです。

またASA素材など耐環境性とPLAに比べて耐熱性に優れた素材なども増えてきているのと3Dプリンター自体の性能が向上しPAやPCなどの所謂エンジニアリングプラスチックの活用が進むと大きく変わってくると思います。

参考

Polymakerから販売されているASAフィラメントのレビューです
3Dプリンターで主に使わているPLA素材についての考察です

関連コンテンツ

よろしければこちらもどうぞ

この記事を書いた人