3Dプリンターの多色プリント、多色3Dプリント鉢の考察

以前から多色を使った3Dプリント鉢を作りたかったので、3Dプリンターで作るプロダクトのカラーについて色々な可能性について考察します。

本記事について

3Dプリンタを扱ったことがない方でも読めるような内容になっています。主に3Dプリンタをいじっていない人向けに、「へぇ」って読めることを心がけた記事となっております。「へぇ」って読めるシリーズ第5段。

そもそもプラスチック製品の多色対応

プラ製品の製造に詳しいわけではないが、基本的には型を用いて単色でパーツを作成する。多色にする場合は、「①色の付いたパーツの組み合わせ」か「②塗装」。塗装する場合でも身近な製品は、パーツの組み合わせで実現されている場合が多いと思います。

3Dプリンタでの多色対応

射出のプラスチック製品を作るよりも多色対応する手段が増えるという点は、3Dプリントの一つのメリットではないかと思う。レジンで着色するということを以前実験していたが、塗装を除いた4つの方法の紹介。またこのページの3DプリンタはFDM方式(積層型)を前提としています。

  1. 素材(フィラメント)を途中で交換する
  2. 複数カラーのパーツを組み合わせる
  3. 複数カラー素材を使う
  4. 多色印刷対応の3Dプリンタを利用する
  5. (補足)注意点、気になる点

上記のうち実際に1と2で3Dプリント鉢をプロトタイプとして製造し一部を販売しました

①素材(フィラメント)を途中で交換する

一番安易である程度どの機材でもできる方法。下から積み上げて製造していく3Dプリンタなので色の切り替えが層の単位になってしまいますが、地道に作業をすればゼブラカラーやカラフルなモデルなどもできる。層毎の色は変えられないので複雑な配色はできないが、植木鉢であれば設計である程度意図したものができると思う。

左のモデル(SSN12限定カラー、2022年2月販売))は、指定した箇所の色を変更する機能を利用してつくりました。PrusaSlicerという印刷設定するスライサーというソフトでは、シングルヘッドの単色プリンタ用に特定のレイヤーでカラー変更する機能があります。途中で印刷が停止され素材が自動的に吐き出されます。付き添っていないといけません。(プリンタによっては30分程度放置されると温度をクールダウンさせる機能があると思いますが、30分は空焚きになります)

この機能は工夫次第で色々な使い方ができます。今後もいくつか試験的なプロダクトを作ってみたいと思います。

右のモデル(SSN11限定カラー、2022年2月販売)は、好きなタイミングでフィラメントを交換してつくりました。3Dプリンタ本体の機能で主に素材切れなどに対応するための素材交換の機能が用意されていて、止めた地点に素材を交換して復旧する機能があります。手動で止めるので全く同じものは作れません。超アナログでシンプルな多色プリントです。SSN11限定カラーは世界で1つのカラーリングの鉢としての販売になります。

②複数カラーのパーツを組み合わせる

SSN06SP 限定モデル

SSN06SP限定モデル(2021年8月販売)は、パーツチェンジできる機能で複数カラーを実現しました。別々のパーツを印刷して組み付ける方法です。この場合は鉢にパーツを差し込み接着剤で止める(止めなくともギリギリのクリアランスではまるようにはなっています)方法。3Dプリントらしさだとネジ込み式にしても良いかもしれません。

SSN06SP限定モデルのOPで販売していたテーパのかかったパーツ

パーツチェンジ自体は色を変えるのみではなく、違う形のパーツを組み付けたり、高さ制限で作れないサイズのものをくっつけて長くしたり(大きいロングポットなど)工夫しだいで色々と楽しめると思います。

③複数カラー素材を使う

SSN09 限定カラー

素材として複数カラー素材を使ってしまう方法。具体的なコントロールが難しいが、途中で色が変化してゆく素材や、素材自体が2色使われたものなどが販売されている。高さによって変化してゆく素材はよく見ますが日本だと多色フィラメントは見かけないです。多色調合してプリントしている方はいます。写真は微妙に見る方向やフィラメントの部分によって色味が違うフィラメントで印刷したSSN09限定カラー(2022年2月販売)です。

MatterHackers Quantum PLA

日本ではまだ多色が混ざった素材はなかなか手に入りにくいですが見る方向によって色味が変わるフィラメントです(印刷に工夫が必要)

④多色印刷対応の3Dプリンタを利用する

多色印刷対応の3Dプリンタにはいくつか種類がある。フルカラー対応のインクジェット式のプリンタも個人が利用できるものがある。「普通の」積層型の家庭用3Dプリンタでは主に「2つ以上のヘッドを搭載しているプリンタ」か「複数の素材の送り出す機能を搭載しているプリンタ」を利用する必要がある。多色印刷の本命はこちらの方法だと思うが機材の選択肢が多くなく比較的コストが高くなる。またいずれの方法も綺麗に印刷するための設定が難しいようです。複数の素材を送り出す機能としては、PrusaのMMU2Sがお手頃なので試してみたい。①の方法と違い積層毎ではなく部分的に色を入れることも可能。

デュアルヘッドの完成品はamazonで取り扱いがあるものは例えばCreator Pro2QIDI TECHi Fastなど。PrusaのMMU2Sなどはチェコから輸入か、中国で販売されているクローンなどを購入する必要がある。

⑤(補足)注意点、気になる点

園芸利用の植木鉢を複数素材で多色印刷(多色製品)にする場合、それぞれの素材の特性が非常に気になります。室内で日常利用では気にならないかもしれませんが、野外の直射日光下、雨ざらしだったりと非常にプラスチックには厳しい環境に晒される植木鉢だと、実際に同じメーカーであっても色が違うと若干性質が違うようで、例えば温度でも60度でガラス転移温度になり柔らかくなるものと58度で柔らかくなるものを印刷した場合、ちょうど中間の温度だと片方の素材が柔らかく片方の素材が硬いという状況になります。

また製造後は紫外線などで常に劣化していっているので素材によっては劣化の具合が違う可能性もあります。温度の点や経年劣化などで特に①フィラメントの途中交換、それを物理的にやってくれる④多色対応プリンタで製造したものは、色を変更したレイヤーから壊れてくる可能性があります。

多色印刷も昔から行われてきましたが、野外利用などの長期利用の実績やレポートはあまりないので、特に3Dプリント植木鉢の野外での多色カラーモデルの利用は検証が必要だと思っています。ただ、多色のプラ鉢は非常に珍しく、様々な表現が可能になるので、そういったプロトタイプという前提で色々なものを作ってみたり使ってみたりしてもらえると良いと思います。いずれプラ製品で寿命は来ますので。

おまけ

2020年秋から耐久性実験をしている鉢。塗装以外の異素材カラーラインを入れたくて、レジンや合皮、スワロフスキーなどで当時鉢を作ってみました。野外条件は、年間通じてたまに雨が当たるベランダ、南西向きで大体5-6時間直射日光という環境です。約1年半経過しましたがPLA樹脂、レジン共に目に見えた劣化はしていないようでした。

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この記事を書いた人

SSN

3Dプリンタ鉢の企画、販売。植物販売など