普段、積層方式の3Dプリンタばかり使っていますが、光造形法(SLA)の3Dプリンタ「ELEGOO MARS 3 Pro」で遊んでみました。機材や手順なども紹介しています。
3Dプリンタを扱ったことがない方でも読めるような内容になっています。とりあえず印刷してみるまでの工程と制作物の紹介です
積層法(FDM)と光造形法(SLA)の違い
3Dプリンタの製造方式として積層法(FDM=熱溶解積層法)はフィラメント樹脂を溶かして積み上げていく方法、光造形法(SLA)はレジンをUVで固めながら積み上げていく方法。技術的ではなく一般家庭で利用する場合のざっくりとした特徴は下記の通りです。
- 熱溶解積層法(FDM):比較的大型が作れる、フィラメント素材の色や種類、特殊素材の選択肢が多い、メンテナンス性がよい、後処理などがない
- 光造形法(SLA):大型作れない、繊細なものが作れる、レジンの取り扱いがやや難しい、後処理が必要、透明素材や自分でレジン着色ができる
光造形法のデメリットがやや多いですが、一番は繊細なものが作れるというところ。フィギュア制作などに向いていると思います。
光造形3Dプリンタ「ELEGOO MARS 3 Pro」を購入
とりあえず使ってみたいということで、定番の人気商品である「ELEGOO MARS 3 Pro」を購入してみました。性能は4K解像度ということで一般的なスペック。値段は昔に比べると安くなっていて自分は46,999円の18%オフクーポンを使って38,539円で購入。最近は8Kのプリンタや印刷サイズの大きいプリンタもありますがとりあえず使って見るには良いと思います。印刷サイズは143.43×89.6×175ということで、植木鉢なら2.5号サイズまでは行けそうです。完成品なので細かい組み立てなどはなし。
同時にELEGOO Mercury Plus 2.0(14,000円)というUV硬化ボックスを購入しました。このボックスは洗浄と2次硬化もできます。もし試すだけであれば、アクセサリーやネイルの硬化に使うためのUVライト(1,000円程度)を購入する方が良いかもしれません。または洗浄機能がないELEGOO Mercuryもあります。私は水洗いレジンしか利用する予定がないので、洗浄機能は不要ですが、これは少し失敗しました!
ほかにはレジンとしてANYCUBICの水洗いレジン「ブラック」と「クリア」を購入しました。また、本体に付属のもので大体利用できると思います(ゴム手袋も付属)。水洗いするためのトレーや洗浄時に使うブラシは100円ショップで購入しました。
ELEGOO MARS 3 Proのセッティング
組み立て工程はほぼなくて貼られているフィルムを外す程度。マニュアルに従って一番はじめにZ軸のレベリングを行います。コピー用紙を敷いて0セットして適度に引っかかりのある状態に設定します。自分は特に調整不要でした。
レジンを入れるパットをネジ止めして中にレジンを流し込んで準備は終了。
データの準備とスライス
データは普段利用利用している植木鉢のデータを利用。データを3Dプリンタ「ELEGOO MARS 3 Pro」で印刷できるデータに変換するスライサーはCHITUBOX(Basic)というELEGOOの3Dプリンタに対応しているフリーソフトを入れました。印刷設定はわからないのでレジンに設定指定がありますが、ひとまずスライサーの初期設定で印刷することにしました。
一般的に、光造形法で印刷する場合はサポートを付けるのがよいみたいですが、何度か印刷テストしましたが植木鉢程度の底面積であればサポート無しでそのまま印刷で良さそうでした。ただまれに外すときに割れてしまうことがありました。スライスをしてデータを保存して、付属のUSBにデータを移します。初回の印刷で問題なく印刷はできました。
印刷が終わったら、水を貼ったトレーの中で筆を使ってレジンを落としました。大体落としたらプレートから造形物を外して水道水で洗ってペーパータオルで水分を拭き取って乾燥。ペーパータオルが毛羽がでるとレジンに付着するのでできるだけ振って水を落として軽く水分をペーパーに吸い込ませて、コンベクションオーブンで乾かしました。(ドライヤーなどでもよいとおもいます)。トレーは野外で放置しておくとレジンが固まるので漉し器等で取り除いて可燃ごみへ。
その後、半日程度乾燥させて、ELEGOO Mercury Plus 2.0にて二次硬化。大体時間は3分程度を向きを変えて2回で大丈夫そうでした。
ELEGOO MARS 3 Proで作った植木鉢
実際に光造形3Dプリンタ「ELEGOO MARS 3 Pro」で作った植木鉢「SSN鉢」です。レジン製なので直射日光や水やりで濡れることが多い園芸とは相性が悪いと思うので実用出来ではなくフィギュア的ではありますが、横幅45mm程度ですが非常に解像度が高くきれいな造形。
クリアレジン(透明)でも作ってみましたが、完成直後は透明でしたが、二次硬化を行うと黄ばんでしまいました。二次硬化の時間で黄ばみ具合が違うので適切な時間設定が必要かもしれません。なお数日程度で黄ばみは少し落ち着いてきました。
製造直後のクリアレジンの造形物です。透明感が綺麗。このままだったら非常にきれいなクリアプロダクトになったのに。
製造して1週間くらい経過した光造形3Dプリンタ「ELEGOO MARS 3 Pro」でクリアレジンで作った植木鉢「SSN鉢」です。やや黄ばみがなくなってきて綺麗になりました。
大型のプリントにもチャレンジしてみました。使用素材が100g以上。なかなか綺麗にできましたが、底がベッドに張り付いて取り外すときに底面が割れてしまいました。初期レイヤーの露光時間を短くするか、このサイズになるならばサポートを付けたほうが良いかもしれません。
総評
普段、FDM法の3Dプリンタで植木鉢を作っていますが、製造プロセスや造形物の特徴含めて光造形法の3Dプリンタは全く別物だと感じました。同じのはプラスチック素材ということとオーバーハングを考慮しなければならないという点。
光造形方式の場合は、たいていモデルにサポートを付けるのが一般的のようですが、植木鉢に関しては底面が広いわけでもなく造形が難しいわけでもないので、長期利用はしていませんがサポートなしのほうが印刷のしやすさや後処理のしやすさがありました。
FDM方式と比べると、やや取り扱いが難しいです。レジン液の取り扱いや印刷したモデルの清掃、3Dプリンタの清掃、二次硬化。また水洗いレジンは水で洗えますがレジン液を取り扱うことになるのと、水洗いではない場合は、アルコール系の溶剤が必要になってくる点。造形精度は非常に高いですが大型のものが作りにくく、扱いはやや難しい(面倒くさい)という感じです。これは普段FDM方式の3Dプリンタを利用している向けの感想共有ですが。印刷自体は3Dデータがあれば特に難しい設定もなく普通に購入してすぐ印刷できました!
フィギュアなど細かい造形物を作るには最適だし、レジンの種類や加工、処理の仕方などで非常にきれいなプロダクトが作れると思います。今度はフィギュア作りなどにチャレンジしてみたい。
今回利用した機材、素材
- ELEGOO MARS 3 Pro (光造形3Dプリンタ本体)
- ELEGOO Mercury Plus 2.0 (UV硬化ボックス)
- レジンブラック
- レジンクリア
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