野外で使うプロダクトを作る場合はどうしても気になるUV耐性。3Dプリンタ用のABS樹脂の特性に近く耐候性のあるPolyLite ASA フィラメントの使用レビューです。
気になる耐候性
野外利用を想定したプロダクトを3Dプリンタで製造する場合、気になるのは耐候性。またPLAの場合はガラス転移温度(Glass transition temperature)も気になります。耐候性とある程度高いガラス転移温度を持ったフィラメントがASA。
日本の3Dプリンタ事情は情報量やパーツ、素材の入手性においてアメリカなどに比べると非常に情報や流通が少ない。近年はエンジニアリングプラスチックが容易に入手しやすくなったりプリンタ自体の性能が向上して印刷できるようになってきているようです。
手軽に扱えるPLA、ABS、PETGなどに関しても多くの種類が出てきましたがPLAのマーケットが大きそうです。主な理由は扱いやすさなのですが、園芸で利用する場合は若干素材の性能が低いのが気になる。園芸で利用するのであれば耐候性観点ではASAが最適だと思う。ただPLAに比べると非常に選択肢が少ない。ABSもそこまで多く選択肢がないが将来的にはASAに置き換わるのではないかとは言われている。
Polymaker Polylite ASAのレビュー、利用レポート
日本で信頼のおけるフィラメントを選択するのがなかなか難しく、海外の活動などを見て判断するしかないのですが、Polymakerに関しては日本語ドキュメントを用意してくれている点、データシートなど細かい情報を開示している点、一度日本語で問い合わせをしたことがありますがきちんと技術的な話も回答いただけましたのでサポートも良いと思います。
今回取り上げる製品はPolymaker 3Dプリンター用高耐候性フィラメント PolyLite ASA 1.75 mm ブラック
スプールの梱包がただのビニール素材ではない。ABSより湿度管理が必要そう。一応乾燥させながら利用することにしました。
透明スプールで、フィラメントの巻は整列されていないですが大丈夫でしょう。
Polylite ASAの推奨設定
- Nozzle temperature:240-260℃
- Build plate temperature(bed):75-95℃
- Cooling fan:OFF
- Printing speed:30-50mm/s
- Raft separation distance:0.15-0.20mm
- Retraction distance:1-3mm
- Retraction speed:20-40mm/s
- Recommended environmental temperature:50-70℃
- Threshold overhang angle:50°
- ※Layer / Infill :0.1mm / 20%
- ※Number of Outline / top bottom layer:3 / 4
- ※Glass transition temperature:97.8℃
推奨設定を見るとビルドプレートへの定着はABSよりは良さそうだが空中温度の要求が若干高い。エンクロージャーが無い3Dプリンタだともしかすると扱いにくいかもしれない。あと冬が結構厳しいかも。
テスト印刷設定
ABSの設定で対応しました。温度をもう少し上げたかったですが自分のエクストルーダーが240度程度までしか対応していないです。エンクロージャー付きの3Dプリンタ。
- Nozzle temperature:240℃
- Build plate temperature:first layer 110℃、100℃
- Nozzle :0.4mm
- FAN:OFF
- 他スライサー設定(Cura)
Polylite ASA 3DBenchy
標準のABS設定での印刷ですが概ね良好な結果だったと思う。細かい部分の造形はできているが全体的にはノズルの温度をもう少し調整したほうが良いかもしれない。一部造形が潰れてしまっているところがある。
難しい造形部分ができている割には船の先端の傾斜部分の造形がやや汚い。印刷速度もしくは温度不足かなと予想するがこれ以上ノズル温度をあげられないので実験はできず。
フィラメントの臭気
あまりABSを利用しないが、他のメーカーのABSよりはやや臭気が強い。
印刷後の色や質感について
自分は後処理として塗装をしないので出力後の色は重要。Polylite ASAのブラックを今回利用しましたが、若干青みかかった青になります。表面は通常のPLAやABSのような光沢感。スライサーの標準設定で糸引きなどは起きていなかった。吸湿しやすいようなので注意が必要ではある。
Polymaker ASAの総括
エンクロージャー付きの3Dプリンタで印刷したこと、室温が30度超える夏の室内で印刷したことという空中温度(環境温度)が高い状態ではあったが、もう少し設定を詰めればうまく印刷できそうで非常に扱いやすいフィラメントだと思った。公式サイトを見ると色は今後追加予定とのことで園芸系やアウトドア系では一般的なフィラメントになってくるかもしれない。
Polymaker ASAを探す
3DプリンタのフィラメントはAmazonが入手しやすいです、怪しい中国製やノーブランドも含め。アメリカのAmazonだとAmazonベーシックでフィラメント取り扱いあったりするんですが日本ももう少し盛り上がって欲しい。案外米国Amazonからの輸入が安い場合もあります。