コナジラミは何色に寄るのか。LEDと光走性の論文を読む

LED の話をしていると、どうしても「植物がどう育つか」に意識が向きます。
ですが実際には、虫も光を見ています。
特にコナジラミのような害虫は、
- どの色に寄るのか
- どの色を避けるのか
- 自然光と人工光で反応がどう違うのか
がわかると、照明設計や sticky trap(粘着トラップ)の考え方も変わってきます。
今回の論文は、violet(紫)から red(赤)までの visible wavelength spectrum(可視波長域)と sunlight(太陽光)を比較して、オンシツコナジラミの phototactic behavior(光走性)を見ています。
結論を先に書くと、この論文は
orange(橙)に最も強く寄りやすいviolet(紫)には比較的寄りにくい- ただし visible light 同士の差は、統計的にはかなりはっきりとは出ていない
sunlightは LED より強くコナジラミを引き寄せた
という結果です。
つまり、「この色なら完全に repel(忌避)できる」とまでは言えません。
一方で、少なくとも 紫系は attract(誘引)されにくく、橙系は attract されやすい という方向感はかなりあります。
まず結論
園芸向けに先に抜き出すと、今回の論文はこう読めます。
- オンシツコナジラミは
orange(橙)にかなり寄りやすい violet(紫)は、この試験では最も寄られにくい側だった- ただし
visible wavelength(可視波長)同士の差は、光強度の条件次第で見え方が変わるかもしれない sunlight(太陽光)は LED より attract(誘引)しやすかった- つまり LED で虫を考えるときは、
色だけでなくlight intensity(光強度)もかなり重要
家庭園芸に引きつけるなら、
黄色〜橙に近い光やトラップ色はコナジラミを寄せやすい可能性がある紫寄りの光は、少なくとも attract されにくい候補として気になる- ただし、照明を変えるだけで防除できるとまでは言えない
くらいが安全な読みです。
この論文は何を見たのか
Abstract では、試験の狙いをこう置いています。
"The present study was designed to control greenhouse whitefly by finding and using insect repellent wavelengths."
つまりこの論文は、オンシツコナジラミに対して repellent wavelengths(忌避的に働く波長) を探す試みです。
方法は大きく 2 つです。
two-way phototactic apparatusdarkness(暗闇)と、violetからredまでの可視光を選ばせる
four-way phototactic apparatussunlightとLEDの選好を見る
ここでいう phototactic behavior(光走性)は、虫が光に向かって移動するか、避けるかを見る行動です。
論文は visible wavelength spectrum(可視波長域)を
violet(380–450 nm)- そのほか青、緑、黄、橙、赤
の帯域に分けて比較しています。
Highlights と Abstract でまず拾うべきポイント
Highlights はかなり明快です。
"The whiteflies had positive phototactic characteristic relative to wavelengths visible light."
"The lowest and highest number of whiteflies were attracted to purple and orange wavelengths, respectively."
"The present study also indicated a significant attraction of T. vaporariorum adults to sunlight compared with LED."
つまり、
- オンシツコナジラミは visible light(可視光)に対して基本的に positive phototaxis(正の光走性)を持つ
- 最も寄られにくかったのは
purple / violet(紫) - 最も寄られやすかったのは
orange(橙) - そして
sunlight(太陽光)は LED より強く attract(誘引)した
ということです。
Abstract の数値もかなりわかりやすいです。
"The lowest (69.2%) and highest (97.8%) number of whiteflies were attracted to violet and orange spectra, respectively."
この数字だけ見ると、紫にもかなり寄ってはいます。
なので、この論文は「紫で完全に避けられる」と読むものではありません。
むしろ、
orangeはかなり attract しやすいvioletは相対的には attract されにくい
と読むのが安全です。
ここは少し慎重に読みたい
この論文で面白いのは、Discussion で著者自身がかなり慎重なことです。
本文 snippet では、
"there was no significant differences between visible light wavelengths"
と書いています。
つまり visible wavelength(可視波長)同士の差は、解析のしかたによってははっきりした有意差が出ていない面があります。
さらに著者は、その理由として
"lack of sufficient light intensity"
の可能性を挙げています。
ここはかなり重要です。
園芸的に言い換えると、
- 虫は色だけで動くわけではない
light intensity(光強度)が弱いと、波長差が十分に表れないかもしれない
ということです。
つまりこの論文をそのまま
紫LEDにすればコナジラミが来ない
と読むのは危ないです。
少なくとも、色と強度はセットで考えるべき だとわかります。
園芸にどう使えるか
1. 黄色〜橙 はやはり注意したい
この論文では orange が最も attract されやすい側でした。
これは sticky trap(粘着トラップ)で黄色が効きやすい、という既存の園芸感覚とも大きくはズレません。
なので少なくとも、
yellowやorangeに近い面- その帯域を強く感じる照明や反射
は、コナジラミを寄せやすい方向として警戒してよさそうです。
2. 紫系 は候補だが、過信しない
violet は相対的には attract されにくい結果でした。
ただし 69.2% は十分高い数字でもあります。
だから園芸的には、
紫系は少しマシかもしれない- でもそれだけで防除はできない
くらいに受け止めるのが安全です。
3. 太陽光 > LED の読み方
この論文では sunlight が LED より attract しやすい結果でした。
ここはかなり面白いです。
園芸的にはつい「屋外のほうが虫が来る」で終わらせがちですが、少なくともこの論文では、太陽光のほうがコナジラミにとって魅力的な視覚環境だった と読めます。
もちろん、これは単純に太陽が悪いという話ではありません。
- スペクトルが広い
- 光量が高い
- 反射環境も違う
などが全部乗っています。
つまり、LED 栽培棚で虫が少なく感じることがあるなら、それは
- 完全密閉
- 物理侵入の差
だけでなく、光環境の違い も一部は関与しているかもしれません。
通常栽培に引きつけるとどう読むか
この論文を家庭園芸にかなり雑に引きつけるなら、次のような読み方ができます。
室内LED棚でコナジラミが少ない気がする- 密閉や侵入経路だけでなく、光環境の差も疑う余地がある
黄色い粘着トラップが効くorange側が attract されやすい結果は、その感覚と大きくはズレない
紫系の照明なら虫が来ないのでは- そこまで強くは言えない
- 少なくとも attract されにくい候補ではあるが、単独で防除策にはしにくい
要するに、照明で虫を考えるときは
wavelength(波長)light intensity(光強度)- trap の色
- 侵入経路
を一緒に見たほうがよさそうです。
この論文からまだ言えないこと
この論文だけからは、次のことまでは言えません。
- アザミウマでも同じ波長反応が出るか
- ハダニでも同じか
- 紫 LED にすれば実害が下がるか
- 栽培用 LED の色温度だけでコナジラミ密度が変わるか
今回はあくまで、Trialeurodes vaporariorum(オンシツコナジラミ)の phototactic behavior(光走性)を見た 1 本です。
ただし、LED を植物だけの話ではなく、虫の行動も変える環境変数 として見る入り口としてはかなり面白いです。
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参考
Phototactic behavior of Trialeurodes vaporariorum Westwood (Hemiptera: Aleyrodidae) under visible wavelengthsJournal of Asia-Pacific Entomology 23(4)(2020) 1181-1187- DOI:
10.1016/j.aspen.2020.09.014 - ScienceDirect: https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1226861520302478
