育苗LEDは何色がよいのか。レタス類の論文から読む発芽率と苗姿

論文シリーズ標準サムネイル

LED 育苗では、つい「何色がいちばん効くのか」を 1 本で決めたくなります。ですが実際には、発芽しやすさ徒長しにくさ葉が広がるか は別の話です。

今回の論文は、レタス、キャベツ、ホウレンソウ、ルッコラを使って、UV-Ablueredfar-redblue+redblue+red+far-redcool-whitewarm-white、そして darkness を比較しています。さらに 4 / 12 / 24 h の photoperiod(点灯時間)まで振っているので、光質と照射時間を分けて考える ための材料としてかなり使いやすいです。

結論を先に書くと、この論文は「育苗 LED は何色が正解か」を単純化するものではありません。
むしろ、

  • 種によって 光が要る種暗くてもかなり出る種 がある
  • 単色光は、発芽そのものより shoot growth(地上部の伸び)側に寄りやすい
  • 同じ波長でも photoperiod(点灯時間)を伸ばすと 苗姿 がかなり変わる

という点を示しています。

まず結論

園芸向けに先に抜き出すと、今回の論文はこう読めます。

  • レタスホウレンソウ は、暗所でもかなり発芽できる
  • キャベツルッコラ は、少なくともこの試験では light exposure(光に当てること)の恩恵が大きい
  • monochromatic spectra(単色光)は、全体に葉や根のバランスより shoot(地上部)を伸ばしやすい
  • 同じスペクトルでも photoperiod(点灯時間)を伸ばすと、shoot height(草丈)が下がって leaf area(葉面積)が増える例が多い
  • つまり LED は 発芽率を上げる道具 であると同時に、苗姿を作る道具 でもある

多肉や塊根の実生棚にそのまま移植するとしたら、「何%出たか」だけで色を決めるのではなく、出たあとにどう締まるか まで見る必要がある、というのがいちばん大きな持ち帰りです。

この論文は何を見たのか

論文タイトルは長いですが、やっていることはかなり素直です。
対象は次の 4 種です。

  • Lettuce(レタス)
  • Cabbage(キャベツ)
  • Spinach(ホウレンソウ)
  • Arugula(ルッコラ)

比較したのは次の 9 条件です。

  • UV-A
  • Blue
  • Red
  • Far-red
  • Blue + Red
  • Blue + Red + Far-red
  • Cool-white LED
  • Warm-white LED
  • Darkness

さらに、各スペクトルに対して

  • 4 h
  • 12 h
  • 24 h

の photoperiod(点灯時間)を設定しています。

要旨の芯はここです。

"different effects"

"germination"

"morphological characteristics"

つまりこの論文は、光で発芽するかどうかだけではなく、seedling length(苗の長さ)、root:shoot ratio(根と地上部の比)、leaf area(葉面積) まで一緒に見ています。

方法はかなり実験的で、だから読みやすい

方法は、家庭園芸の播種そのものではありません。

論文では、

  • 20 seeds
  • 12 × 12 × 5 cm のプラスチック容器
  • triple absorbent paper
  • 9 ml of water

という条件で発芽を見ています。

要するに、土ではなく、湿らせた紙の上で発芽させる試験です。
ここは前回の アロエの実生論文を読む。ペグレラエは25℃で播くとよいのか と少し似ています。

この方法の利点は、

  • 用土差を減らせる
  • 湿度条件をそろえやすい
  • 発芽確認がしやすい
  • 光質の差を見やすい

ところです。

逆に言うと、この論文からそのまま

  • どの用土がよいか
  • 覆土するべきか
  • 腰水にするべきか

までは言えません。

ただし LED を読むうえでは、このくらい条件を切り出しているほうがむしろ都合がよいです。
「播種環境の差」ではなく「光の差」が見えやすいから です。

Highlights で見えること

この論文の Highlights は、そのまま骨組みになります。

"significant variations"

"higher germination rates"

"high germination capacity"

"Monochromatic spectra"

"decrease in shoot height"

"increase in leaf area"

これを日本語で並べると、

  • 波長と photoperiod(点灯時間)で、発芽と苗姿はかなり変わる
  • キャベツとルッコラは、光で発芽率が上がりやすい
  • レタスとホウレンソウは、暗所でもかなり出る
  • 単色光は shoot(地上部)側に寄りやすい
  • 同じスペクトルなら、photoperiod(点灯時間)を伸ばすと徒長が抑えられ、leaf area(葉面積)が増える例が多い

ということです。

この最後の点は、LED 育苗でかなり重要です。
「色」だけを見ていると見落としやすいのですが、点灯時間も苗姿をかなり動かします

結果表と要旨から読めること

レタスホウレンソウ は暗所でもかなり出る

Section snippet では、暗条件での初動がこう書かれています。

"For lettuce, the first appearance of a root was observed at 24 h"

"for spinach and arugula at 48 h"

"for cabbage at 72 h"

さらに暗条件での発芽率については、

"lettuce and spinach seeds, reaching 100%"

"for arugula and cabbage ... 45% and 30%"

とあります。

つまり、少なくともこの試験では、

  • レタスホウレンソウ は暗くてもかなり出る
  • キャベツルッコラ は暗条件だと落ちやすい

という差があります。

この論文の読みどころは、ここで「葉物全般は光が要る」とまとめていない点です。
同じ葉物でも種ごとの差がかなりあるので、多肉や塊根でも属や種で反応が違う前提で読む のが自然です。

発芽率 が高い条件と 葉が広がる 条件は一致しない

要旨では、各作物ごとに目立つ条件を例示しています。

"a 12 h photoperiod with a blue spectrum led to a 100% germination rate"

"The highest germination rate observed was 70%"

"highest leaf area, reaching 119.16 mm²"

ここから読めるのは、発芽率の最大値leaf area(葉面積)の大きさ を一緒くたにしないほうがよい、ということです。

例えばレタスでは、12 h blue100% germination77.4 mm² が出ています。
一方でホウレンソウでは、4 h far-red90% germination119.16 mm² が出ています。

つまり、「最もよく出る条件」と「最も見栄えのよい苗になる条件」は、必ずしも同じではありません。

これは塊根や多肉の実生でもかなり重要です。
発芽率だけを追うと、その後の苗が柔らかく伸びすぎることがあります。逆に、少し発芽率が落ちても、締まった苗姿 を取れる条件のほうが園芸上は価値が高いことがあります。

単色光は地上部を伸ばしやすい

Highlights でかなり明確に出ているのがここです。

"Monochromatic spectra cause mainly shoot growth"

この一文は短いですが、かなり重要です。
単色光は「効きそう」に見えますが、この論文の整理では、全体のバランスより shoot(地上部)側に寄る と読めます。

もちろん、これは葉物野菜の幼苗試験であって、パキポディウムやアガベにそのまま適用するものではありません。
ただ、少なくとも

  • 赤だけ
  • 青だけ

のような極端な設定は、家庭園芸でも扱いに注意が必要です。

多肉や塊根の LED 育成でも、既にサイト内で書いている 植物育成用LEDライトの選び方①LEDスペクトル比較 のように、単一波長の強さよりバランス を見る発想はやはり残したほうがよさそうです。

photoperiod(点灯時間)も苗姿を作る

もうひとつ重要なのはここです。

"increasing the photoperiod"

"decrease in shoot height"

"increase in leaf area"

要するに、同じスペクトルでも、photoperiod(点灯時間)を伸ばすと

  • shoot height(草丈)は下がる
  • leaf area(葉面積)は増える

という方向の変化が多く見られた、ということです。

LED の話はつい「何色がよいか」に寄りますが、実務的には

  • スペクトル
  • 点灯時間
  • 照度
  • 距離

がセットで効きます。

今回の論文は、そのうち少なくとも スペクトルと photoperiod(点灯時間)は別のダイヤル だと教えてくれます。

多肉や塊根の育苗にどう読むか

1. 発芽率 だけで LED を選ばない

この論文は、発芽率と morphology を分けて見ています。

これはそのまま、多肉や塊根の実生棚にも持ち込めます。
つまり、

  • たくさん出た
  • でも徒長した
  • でも葉面積は増えた

は、全部別の評価軸です。

論文の読み方としては、何%出たか だけではなく、

  • shoot(地上部)が伸びすぎていないか
  • root:shoot ratio(根と地上部の比)が偏っていないか
  • leaf area(葉面積)が過剰に広がっていないか

まで見たほうがよい、ということになります。

2. 単色光を正解にしない

今回の試験では、単色光は shoot growth 側に寄ると整理されています。
したがって、家庭園芸で極端な波長だけを信仰するより、

  • 複合光
  • 白色光ベース
  • 必要に応じた補助波長

くらいの考え方のほうが実務向きです。

特に塊根植物では、見たいのは 早く伸びる苗 より 締まって壊れにくい苗 であることが多いはずです。

3. 点灯時間のほうが効く場面もある

色だけを変える前に、

  • 点灯時間を長くする
  • 光源距離を見直す
  • 1日の光量を揃える

だけで十分改善するケースもありそうです。

LED 育苗の調整は、何色を買うか より、まず どう点けるか のほうが効く場面があります。
今回の論文は、その感覚をかなり補強してくれます。

この論文からまだ言えないこと

一方で、この論文だけからは次のことまでは言えません。

  • 多肉植物や塊根植物で、どの波長が最適か
  • PPFD や DLI をどこまで取るべきか
  • 発芽後何日で自然光や白色光に切り替えるべきか
  • 紫外線や遠赤を家庭園芸でどこまで足すべきか

あくまで今回は、葉物野菜の幼苗試験を、多肉や塊根の LED 育苗を考えるための基礎論文として読む 位置づけです。

ただし、その基礎としてはかなり有用です。
少なくともこの論文を読むと、LED の話を

  • 発芽率
  • 徒長
  • 葉面積
  • root:shoot ratio

に分けて考える癖がつきます。

関連記事

参考

yurupo

yurupo

cf. yurupu. RE:YURUPUの編集長、植物記事の編集、ライティングを担当