Aloe arborescens のLED論文を読む。赤色と青色で何が変わるのか

LED の話は、どうしても「白色がよいのか」「赤青が効くのか」に流れやすいです。
ただ、実際には 何を増やしたいのか で見るべき指標が変わります。
ここでいう shoot proliferation(シュート増殖)は、ざっくり言うと培養容器の中で芽や茎の先端にあたる部分をどれだけ増やせるか、という話です。
家庭園芸でそのままやる管理ではありませんが、
- 子株や芽のようなものを増やしたいのか
- 徒長せずに姿よく育てたいのか
- 成分や色素の反応まで見たいのか
で、LED の読み方が変わることはかなり共通しています。
今回の論文は、Aloe arborescens の in vitro culture で、
redbluewhitered 75% + blue 25%greenfluorescent light(対照)
を比較し、シュート数、草丈、生体重、窒素量、フェノール類、抗酸化能、色素量 がどう変わるかを見ています。
結論を先に書くと、この論文は「LED の色でアロエをどう締めて育てるか」を直接教えるものではありません。
むしろ、
RとRBではnumber of shoots(増えた芽・茎の本数)が増えやすい- 同時に草丈も出やすい
BやRBは total phenols(総フェノール量)や FRAP(抗酸化能の指標)が高い- photosynthetic pigments(光合成色素)は大差が出ていない
という形で、増殖量 と 見た目の締まり と 代謝反応 を分けて読む必要がある論文です。
ここでいう total phenols は、植物が持つ防御系やストレス応答系の化合物群をざっくりまとめた量です。
一般には、高いほど防御やストレス応答が強く出ている可能性を示し、低いほどそうした反応は相対的に弱いと読めます。高いから即「調子がよい」ではなく、光や乾燥などに対して身構えている状態を含むことがあります。
FRAP は Ferric Reducing Antioxidant Power の略で、抗酸化能をみる試験法のひとつです。
一般には、高いほど酸化ストレスに対抗する還元力が強く、低いほどその反応は小さいと読めます。こちらも、よく育っているというより何かに反応して防御側が動いていると読むほうが安全です。
また photosynthetic pigments は、主に chlorophylls や carotenoids のような光合成に関わる色素を指します。
一般には、多いほど光を受けて使う装備が厚く、少ないほどその装備は薄いと見やすいですが、ここも単純に「多いほどよい」とまでは言えません。
まず結論
園芸向けに先に抜き出すと、今回の論文はこう読めます。
redとred + blueは、Aloe arborescensの培養シュートでnumber of shootsを増やしやすい- ただし増える条件は、同時に
height(高さ)も出やすく、徒長気味になる可能性もある blueとred + blueは、FRAPやtotal phenolsが高いchlorophyll(クロロフィル)やcarotenoids(カロテノイド)は、少なくともこの試験では大差が小さい- つまり LED は「何色が最強か」より、何を評価軸にするか で読むべき
家庭園芸に引きつけるなら、LED を選ぶときも
- とにかく増やしたいのか
- 締まった姿を優先したいのか
- 色素やストレス反応を見たいのか
を分けて考える必要がある、というのがいちばんの持ち帰りです。
たとえば通常の栽培環境に引きつけるなら、こんな読み方になります。
白色LEDを基準光として使うなら、極端な反応を避けつつ様子を見やすい赤を強めると、少なくともこの論文の方向ではnumber of shootsは増えやすいが、同時に高さも出やすいかもしれない青を足すと、見た目の増殖量より、代謝やストレス応答側の変化を見ている可能性がある
もちろん、これは鉢植えアロエにそのまま移す話ではありません。
ただ、「LED の色を変えると何が動くのか」を考える入り口としては、このくらい具体例があるとかなり読みやすくなります。
この論文は何を見たのか
論文タイトルどおり、対象は Aloe arborescens です。
ただし、鉢植え株や実生苗ではなく、in vitro-cultivated shoots(培養下で増やしたシュート)を LED の下で比較しています。
要旨では、比較光源を次のように置いています。
"red light (R), blue light (B), white light (W)"
"75% red light and 25% blue light (RB), and green (G)"
"fluorescent light tubes (FL) were used as control"
つまり、この論文は
RBWRBGFL
という 6 条件比較です。
結果として見ているのは、単なる増殖本数だけではありません。
number of shoots(シュート数)height(高さ)total fresh weight(総生体重)total organic nitrogen(総有機窒素)total phenols(総フェノール量)FRAP(抗酸化能の指標)flavonoids(フラボノイド)chlorophylls(クロロフィル)carotenoids(カロテノイド)
まで見ています。
この時点で、かなり面白いです。
LED の色を、単なる「伸びる / 伸びない」ではなく、増えるか、背が出るか、代謝が動くか まで分けて見ています。
要旨でまず拾うべきポイント
要旨でいちばん重要なのはここです。
"display a greater number of shoots"
"tend to be taller"
"higher total fresh weight"
これは R と RB について書かれている部分です。
つまり、赤単独と赤青混合では、
number of shoots(増えた芽・茎の本数)が増える- 背丈も出やすい
- 生体重も増える
という方向に動いています。
次にここです。
"significantly higher"
"R, B and W light regimes"
これは total organic nitrogen(総有機窒素)の話です。
つまり窒素量は、少なくともこの試験では R / B / W が高めです。
さらに代謝系では、ここが効きます。
"highest values of FRAP and total phenols"
"detected in RB and B"
ここから、blue が入ると、少なくとも antioxidant capacity(抗酸化能)や phenolic accumulation(フェノール蓄積) 側では存在感がある、と読めます。園芸的にかなり雑に言えば、よく増えるというより、何かに反応して体の中身を動かしている方向です。環境によっては、葉色の変化や stress color(ストレスカラー)っぽい見え方のきっかけになる可能性もありますが、この論文自体はそこまで直接は見ていません。
一方で色素量は少し違います。
"did not significantly differ"
"slightly higher amount of chlorophyll b in shoots cultivated under red light"
つまり、chlorophylls や carotenoids は大差が出ておらず、赤で chlorophyll b が少し高い程度です。
ここでいう photosynthetic pigments(光合成色素)は、主に chlorophylls(クロロフィル)や carotenoids(カロテノイド)のことです。
園芸にどう読むか
1. 増える条件 と 締まる条件 を同じにしない
この論文でいちばん使いやすいのはここです。
R と RB は number of shoots(増えた芽・茎の本数)を増やしやすい一方で、height(高さ)も出やすく、徒長気味になる可能性もあります。
つまり、
- よく増える
- よく伸びる
が同時に起きています。
これは家庭園芸でもかなり重要です。
LED の条件を見て「増えやすい」と書いてあっても、それがそのまま 締まったよい姿 を意味するわけではありません。
アロエや多肉で見たいのが、
- 子株が増えること
- 背丈が暴れないこと
- 葉が薄くなりすぎないこと
のどれなのかで、最適条件の読み方が変わります。
2. blue は増殖量より、反応の質を見る材料として面白い
今回の論文では、blue 単独が最も number of shoots を増やしたわけではありません。
しかし RB と並んで FRAP と total phenols が高いので、生長量とは別の反応 を引き出している可能性があります。
ここは LED 記事としてかなり使いやすいです。
つまり、
赤系: 量を取りに行く青系: 反応の質を見る
という読み方の土台になります。
もちろん、これは雑な一般化なので、そのまま家庭園芸へ断定はできません。
ただ、少なくとも LED を「明るいか暗いか」だけで見るより、波長ごとに反応の種類が違う と読むほうが自然です。一般論としては、こうした反応が強いときは、
- growth(成長量)がそのまま伸びるとは限らない
- stress response(ストレス応答)が先に立つことがある
- 葉色や締まり方の変化のきっかけになることがある
と見ておくとわかりやすいです。
3. 白色 は地味だが、比較の軸として重要
この論文では、white も total organic nitrogen が高い側に入っています。
一方で、代謝系の最高値は RB や B に出ています。
この差を見ると、白色光は
- 極端な波長反応を狙うより
- 比較の基準として置きやすい
光だと読めます。
サイト内で既に書いている 育苗LEDは何色がよいのか。レタス類の論文から読む発芽率と苗姿 でも、単色光だけで結論を急がないほうがよい、という流れでした。
今回のアロエ論文は、それを培養系の増殖側から少し補強している感じです。
4. 通常栽培に引きつけるとどう読むか
この論文を、そのままではなく 通常の栽培環境 に引きつけて読むなら、次のような仮説の置き方ができます。
子株や芽数を増やしたい株RやRBの方向はヒントになるかもしれない- ただし同時に
heightも出やすいので、姿が緩む可能性は警戒する
締まった姿を維持したい株増えやすい色をそのまま正解にしない- 白色を基準にして、まず距離や点灯時間を詰めたほうが安全
葉色や反応の質を見たい株BやRBのように、phenols や FRAP が動く条件は気になる- ただし「よく育つ」と「反応が強い」は別物として考える
つまり、家庭園芸での読み替えとしては
増やしたいなら赤寄りを試す余地がある姿を崩したくないなら増殖条件をそのまま採用しない青は量より質の変化を見る光として読む
くらいがちょうどよさそうです。
この論文からまだ言えないこと
この論文は面白いですが、そのまま家庭園芸に持ち込めるわけではありません。
言えないことはかなりあります。
- 鉢植えの
Aloe arborescensを何色で育てれば締まるか - 多肉や塊根植物の LED 栽培で
RやRBが本当に最適か - 実生苗でも同じ反応が出るか
- PPFD や距離、点灯時間まで含めて何が最適か
要するに今回は、培養シュートの増殖論文 です。
読む位置づけとしては、
LED で何を見るべきか増殖量と姿を分けて考える代謝指標まで含めて色を読む
ための材料として使うのがよさそうです。
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参考
In vitro culture of Aloe arborescens shoots using light-emitting diodesActa Horticulturae 1155(2017)- DOI:
10.17660/ActaHortic.2017.1155.60 - Acta Horticulturae: https://www.actahort.org/books/1155/1155_60.htm


