Aloe descoingsii と subsp. augustina の見分け方。原記載から花と葉の違いを読む

Aloe descoingsii の基本亜種と subsp. augustina の見分け方を扱う論文記事のサムネイル

小型アロエとして流通する Aloe descoingsii には、葉の幅、白い斑点、刺の見え方が異なる株があります。こうした違いを見たとき、基本亜種 subsp. descoingsii と subsp. augustina の差なのか、栽培環境や個体差なのかは、葉だけでは決めにくいところです。

複数の資料を突き合わせると、最も重視しやすいのは開花時の花被(perianth、花弁と萼をまとめた部分)の輪郭です。葉の特徴は補助線として有効ですが、花がない株の同定は暫定扱いにするのが安全です。

まず結論

  • 基本亜種 subsp. descoingsii は、子房付近でふくらみ、口へ向かって狭くなる短い壺形(urceolate)の花をつける
  • subsp. augustina は、花筒の側面がより平行で、基本亜種ほど強くくびれない、ほぼ円筒形の花をつける
  • 花がないときは、augustina の細めの葉、大きく明瞭な白い疣状突起、疣の先に出る芒・剛毛状の小刺が手がかりになる
  • 葉色、白斑、ロゼットの締まりは光量、水分、栽培環境でも動くため、葉だけでの断定は避ける
  • 現行の POWO は subsp. augustina を受容しているが、両亜種を複数集団で比較した分子研究は確認できず、区分の根拠は主として形態差と地理的隔離にある

Aloe descoingsii の基本亜種と subsp. augustina の花と葉の違いを示す模式図Aloe descoingsii の基本亜種と subsp. augustina の花と葉の違いを示す模式図

この図は診断点を見やすくした模式図で、植物や花の縮尺を共通にしたものではありません。

見分ける順番は「花、葉、由来情報」

同定に使う情報は、同じ重さではありません。今回の資料からは、次の順で見るのが妥当です。

  1. 開花時の花筒の輪郭と花口の幅
  2. 葉の幅、白い疣状突起、疣上の小刺
  3. 採集番号、産地名、入手元などの由来情報
  4. 葉色、株の締まり、ロゼットの大きさ

花色は両者とも橙色から緋赤色の範囲に重なるため、色だけでは分けにくい形質です。ロゼット寸法もどちらも極小型なので、サイズだけでの判断には向きません。

基本亜種の花は、口へ向かって狭くなる

G.W. Reynolds が1958年に発表した 種の原記載 では、基本亜種にあたる植物の花被は長さ7-8 mmです。子房部で直径約4 mm、花口で約3 mmと記載され、口へ向かって狭くなります。

原記載の検索手がかりになる箇所を短く抜くと、次の部分です。

“4 mm. diam. across the ovary, narrowing to 3 mm. at the mouth”

原記載のラテン語と英語では花被を cylindric と表現していますが、寸法は明らかに花口側が狭いことを示しています。後に、原記載に用いられたクローンを保有する Huntington Botanical Gardens は、この花を short, urceolate corollas、つまり短い壺形の花冠として強調しています。

したがって、ここでいう「壺形」は、丸い花がつくという意味ではありません。子房部が最も太く、そこから花口へ少し絞られる輪郭を指します。

原記載に基づく基本亜種の主な特徴は次の通りです。

  • 茎はないか非常に短く、よく子株を出して群生する
  • 1ロゼットはおよそ8-10葉
  • 葉は卵形から先細りで、長さ最大約30 mm、基部幅約15 mm
  • 葉面には鈍白色の疣状突起が多く、白斑状に見える
  • 花序は通常単一で高さ12-15 cm、頭状に約10花をつける
  • 花被は緋赤色で、花口付近はやや淡色から橙色になる

Reynolds はロゼット径を約5-6 cmとしています。一方、Huntington の記載元クローンは4 cm以下とされます。栽培条件や測定個体で幅があるため、「世界最小」と断定するより、アロエ属の最小級とするのが安全です。

subsp. augustina は、花のくびれが弱い

J.J. Lavranos は1995年、マダガスカル南西部 St Augustin の集団を subsp. augustina として記載しました。IPNI は掲載誌を Cactus and Succulent Journal 67巻3号、命名ページを161頁と記録しています。

原記載を紹介した翌年の 文献レビュー は、基本亜種との差を次のように要約しています。

  • 葉の白い斑点がより大きく明瞭
  • 葉上の小刺がよりはっきりする
  • 花は基本亜種ほど強い壺形にならない

後続のアロエ図鑑 Aloes: The Definitive Guide は、augustina の葉をより細く灰緑色で、疣状突起に芒・剛毛状の小刺を伴うものとして整理しています。花は基本亜種より円筒形に近く、側面が平行で花口が広い方向です。Coromandel Cacti の比較写真 でも、augustina の花は parallel sided flower と説明されています。

ここで大事なのは、augustina の花を「完全な円柱」と決めつけないことです。資料間で言い方には幅があり、安定している差は、基本亜種よりもくびれが弱く、花口が広いという相対的な輪郭です。

葉だけで見るときの比較表

形質subsp. descoingsiisubsp. augustina識別価値
花の輪郭子房部がふくらみ、口へ狭まる壺形側面がより平行で、円筒形に近い非常に高い
花口子房部より明瞭に狭い基本亜種より広い非常に高い
花色緋赤色から口部は橙色橙色から緋赤色低い
葉幅比較的幅広い卵形より細い傾向中から高
葉色鈍緑色灰緑色の傾向中。環境変異あり
白い疣状突起多いが鈍白色より大きく明瞭な傾向中から高
疣上の小刺目立ちにくい芒・剛毛状。葉裏の稜で目立つ高い
群生性強い強い低い
ロゼット寸法数cmの極小型同じく極小型低い

非開花株で augustina を支持しやすいのは、細い灰緑色の葉、明瞭な白い疣、疣から1本ずつ出る小刺が同時に見えるときです。反対に、葉が比較的幅広く、白斑が鈍く、表面はざらつくものの疣上の小刺が目立たなければ、基本亜種を支持します。

ただし、これは確定キーではありません。強光や乾燥で葉は赤褐色に寄り、弱光では緑が強く、葉が伸びて見えることがあります。葉だけの判定は、あくまで「どちらを支持するか」までに留めます。

写真とラベルで確認する実用キー

花がある場合

  • 花の中央付近がふくらみ、花口が明らかに絞られる: 基本亜種を支持
  • 花筒が細い円柱に近く、花口まで幅があまり変わらない: subsp. augustina を支持

花は斜めからではなく、真横から撮影します。子房部の最大幅と花口幅を同じ写真上で測ると、印象だけでなく比率で残せます。基本亜種の原記載値では、花口幅 ÷ 子房部幅は約0.75です。augustina は1に近づくと予想されますが、集団統計は確認できないため、この比率は現段階では仮説的な測定指標です。

花がない場合

  • 成葉3枚の長さと最大幅を測り、長幅比を残す
  • 葉表だけでなく、葉裏の稜(キール)を拡大撮影する
  • 白い疣を10個ほど選び、小刺の有無と長さを記録する
  • 同じ株を季節と光環境を変えて撮り、葉色だけで判断しない

ラベルと入手情報

  • St AugustinLa Table、Lavranos et al. 29194 は subsp. augustina と整合する
  • AnjamalaFiherenana、Descoings 2440、HBG 106049 は基本亜種の記載元系統と整合する

採集番号や産地名は強い補助情報ですが、流通ラベルの転記ミスは起こりえます。株の形と由来情報が矛盾するときは、どちらか一方だけで断定しないほうがよいでしょう。

分布と生育地は、似ているが同じではない

基本亜種のタイプ産地は、マダガスカル南西部 Toliara の北東約46 km、Anjamala 村の先、Fiherenana 川南東側です。Reynolds の原記載では、標高約350 mの石灰岩崖上にある、南向きの浅い土壌で多数見つかったとされています。

subsp. augustina のタイプ採集地は Toliara 南方の St Augustin、La Table です。Lavranos et al. 29194 の採集日は1993年12月6日で、タイプはパリ植物標本館(P)に置かれています。後続資料では、標高約100 mの石灰岩上、低木の陰に生育するものとして整理されています。

両者はどちらもマダガスカル南西部の石灰岩環境に結びつきますが、別の局地集団です。基本亜種の崖上の浅土と、augustina の低標高・低木下という違いが葉姿に関係する可能性はあります。ただし、これは生育地からの推論であり、共通環境栽培試験で証明された差ではありません。

遺伝情報だけでは、亜種区分を証明できない

2002年の Aloe の核DNA量研究 では、基本亜種と subsp. augustina はどちらも二倍体で2n=14とされ、1C値はそれぞれ約16.3 pgと16.6 pgでした。

数値が近いことは、両者が近い分類群であることと矛盾しません。しかし、核DNA量が近いだけで亜種関係が証明されるわけではありません。

2018年の マダガスカル産 Aloe の分子系統研究 には Aloe descoingsii が含まれますが、今回確認できた公開情報では、両亜種を複数集団で比較した解析は見当たりません。現時点では、花と葉の形態差、地理的隔離、現行の分類学的受容を組み合わせて読むのが妥当です。

保全と流通で確認したいこと

POWO の一般情報 が参照する IUCN 評価では、Aloe descoingsii は EN(Endangered、絶滅危惧)です。

また、現行の CITES Aloe Checklist は、種 Aloe descoingsii、subsp. descoingsii、subsp. augustina をいずれも附属書Iとして掲載しています。古い一覧や一般的な「Aloe spp. は附属書II」という説明だけでは、この種の扱いを取り違える可能性があります。

附属書Iは、とくに国際取引を厳しく制限する区分です。栽培株の所持や国内流通を一律に否定する意味ではありませんが、輸入株や由来不明株では、繁殖由来、入手経路、必要な手続きが確認できるものを選ぶのが安全です。

まだ言えないこと

  • 葉幅、疣、小刺を複数集団で定量比較した統計値
  • 同じ環境で育てたときにも葉色や刺の差が安定して残るか
  • 花口幅 ÷ 子房部幅の、両亜種それぞれの集団分布
  • 両亜種間の分子遺伝的距離と、地理的な遺伝構造
  • 園芸流通株のうち、どの程度が真正な基本亜種、augustina、交配由来なのか

とくに園芸流通には Aloe descoingsii を親に持つ小型交配種があります。Aloe ‘Pepe’ は A. descoingsii × A. haworthioides として発表された交配種で、葉姿だけによる誤同定の一因になりえます。

まとめ

基本亜種と subsp. augustina を分けるとき、最初に見るべきなのは花です。

  • 子房部がふくらみ、花口へ狭まる短い壺形なら基本亜種を支持する
  • 側面がより平行で、花口が広いなら subsp. augustina を支持する
  • 非開花株では、細い葉、明瞭な白い疣、疣上の小刺を組み合わせて見る
  • 葉色やサイズだけでは決めず、ラベル、産地、採集番号も照合する

花がない段階では、判定を急がず、開花まで同じ株の葉表・葉裏・由来情報を記録しておくのが最も確実です。

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参考にした主なソース

  1. Reynolds, G.W. (1958). A new Aloe from Madagascar. Journal of South African Botany 24: 103-105.
  2. Lavranos, J.J. (1995). A new subspecies of Aloe descoingsii Reynolds (Aloaceae, Madagascar). Cactus and Succulent Journal 67(3): 158-161.
  3. IPNI: Aloe descoingsii subsp. augustina.
  4. POWO: Aloe descoingsii / subsp. augustina.
  5. Kakteen und andere Sukkulenten 47(12), 1996, p.257. Lavranos (1995) の同時代レビュー。
  6. Carter, S., Lavranos, J.J., Newton, L.E. & Walker, C.C. (2011). Aloes: The Definitive Guide. Kew Publishing, pp.392-393.
  7. Huntington Botanical Gardens: ISI 2017-12 Aloe descoingsii.
  8. Mottram, R. (2017). The plant gatherings and other vouchers of John J. Lavranos, Part 2. Cactician 11.
  9. Zonneveld, B.J.M. (2002). Genome size analysis of selected species of Aloe. Bradleya 20: 5-11.
  10. Dee, R.J. et al. (2018). A phylogenetic analysis of the genus Aloe in Madagascar and the Mascarene Islands. Botanical Journal of the Linnean Society 187: 428-440.
  11. CITES Aloe Checklist, PC27.
yurupo

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cf. yurupu. RE:YURUPUの編集長、植物記事の編集、ライティングを担当。植物栽培歴は20年以上。